ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2011.07.15
滝川豆焼沢
カテゴリー:

2011年7月15-16日

 

今回はメンバーの都合により三連休前の金土しか時間が取れなかったため、久しぶりに奥秩父へでかけた。多くの美しい滝をかける豆焼沢は沢の会に入会したての6年前に初めて訪れて以来、いつか自分で再訪したいと願っていた。あの時は、しっかりしたリーダーに連れられてただついて行けばよかった。というか、それしかできなかった。そのために難しかったという記憶はなく、楽しい思い出だけが残っていた。当時の会報に載せた記録を読み返してみても、能天気なことしか書いていない。

今回再訪したのは、あの美しい渓を再び歩きたいという想いと共に、6年たって自分の力でどれだけやれるのか試してみたかった・・・そういえば先週も同じことを言っていた気がするが、そんな時期にさしかかったのかもしれない。

==================

当日8時に大月駅に集合し、レンタカーで出合いの丘の駐車場へ。平日のせいか他に車はなかった。ここで沢支度をすませ、わさび資料館裏のヘリポート脇を通って作業道へ入り、適当なところでワサビ沢沿いのフカフカ斜面を下って豆焼沢出合へ降り立つ。さあ、6年ぶりの遡行はどのようになるのだろうか。月並みな言い方だが、期待と一抹の不安を抱えて入渓する。

最初からゴルジュの小滝とナメが続き、落ち着いたしっとりとした渓相だ。今回は二人とも直前まで多忙を極め、ほんとうに沢旅ができるのか不安を抱えて当日を迎えた。とくにYさんは見るからに疲れた様子で不調なため、初日は無理せずに早めに遡行を切り上げることにした。

まったりと歩いて行くと幅広6m滝でがらりと雰囲気がかわる。少し離れた所からは難しそうに見えたので、安易に目の前右岸の踏み跡をたどってしまうが、これが失敗だった。どんどん追い上げられておかしいと気づき振り出しへ。滝下へ行ってみれば左側から難なく越えられた。う~ん、先が思いやられる。(反省その1、ということは他にも?)

頭上に黄色い橋が見え、樹林越しに大滝があらわれた。2段25mのホチの滝だ。一枚岩のスラブをまっすぐに水が流れ落ちていて壮観なり。川原で滝を見ながら休憩して早めの昼食とする。登れない滝なので右岸の高巻きルートは明瞭だ。2段目もまとめて巻くと途中に放水管から勢いよく水が踊りでていた。不思議なもので立派なホチの滝は忘れていたのに、この光景はよく覚えている。頭上の橋や放水管は減点だけれど、これから先は再び落ち着いた渓相に戻る。

最初の核心部であるゴルジュの5m、3m滝が見えて来た。2段目の右壁にはベタ打ちの残置があり、スリングがたくさんかかっている。そこまでして登ることもないよねーとの口実で、あっさり左岸から巻く。沢に降りるところが急斜面で二箇所に懸垂用の残置スリングがあった。ならばと、少しだけだが残置を利用して懸垂で沢床へ。

その後も数mほどの滝が続くが、それほど簡単でない滝も多く、空身やショルダーで登ってお助け紐を出す場面が2回あった。トオの滝2段8mの下段は左のルンゼから巻き、上段は左壁から滝上へ斜上トラバース。滝の落ち口に抜けるところがいやらしかったが、ここはなんとか巻かずにすんだ。

しばらく進むと右岸が段丘状にひらけ、絶好のテンバがあらわれた。もうここしかないと思い、初日の行動を終えることにした。ここまで予想以上に時間がかかったが、3時前なのでいつも残業している我がパーティーにとってはゆとりの時間だ。普段なら泊るには早すぎる立地なのだが、整地も不要の2LDKサイズで、なによりも広々とした開放感はピカイチだ。

テントを張って着替えをすませ、まずはシエスタ。少し休んで心身ともに元気を取り戻し、焚き火のしたくに取りかかる。時間がかかったが、焚き火熾しは楽しい。さあ、火もついたことだしビールで乾杯しようと、沢水で冷やしたカンを開けビールを注いだつもりだったのに・・・ビールが真水のような色をしているではないか。えっどうしてぇーと、飲んでみるとまさに水。最初は狐につままれたような気分だったが、よく見るとアルミカンに小さな傷がついていた。沢水に浸している間に石角か何かがあたって亀裂が入ったらしい。初めてなので驚いたが、こんなことも起こりうるのだと思い知らされる。

ということで、ささやかな楽しみが消えてしまったが、盛大に燃える焚き火とともにゆったりと流れる時間を過ごす幸せを感じているうちに、ビールのこともホチの滝の川原に置き忘れてしまったメガネ入りケースのこと(反省その2:もし見つけた人がいたら是非連絡をください!)も、すべて忘れてしまう。沢旅の良さは、やはり水辺に泊って焚き火をたいてまったりとした時間を過ごすことだと、しみじみする。

 mameyaki1

 

翌日は長い行程が予想されるので6時前には出発する。しばらくは平凡な流れだが、心が落ち着く。左右から枝沢が流れ込む十字渓谷状の地点を過ぎると2段6mとなる。下段は右から取り付き上段は滝をまたいで左を登る。沢が左にカーブしたところの階段状4m滝を左から登ると、つぎは5mの斜滝となる。左岸を巻くとすぐに2条8mの美しい滝が見えて来る。右側を小さく巻いて中段から水際を登る。

次々と登れる小滝やナメ滝があらわれ楽しいところだ。沢が再び左に大きく曲がる所のスダレ状8mも苔と水流の組み合わせが美しい滝だ。前回のおぼろげな記憶ではロープを出してもらって右側を登ったが、自信がなかったので左の小ルンゼから簡単に巻いてしまった。

その後も快適に登れる小滝が続き、いよいよ4段50mの大滝があらわれる。あの「東京周辺の沢」の表紙を飾っている大滝だ。何度見ても感動する。ザックをおいて滝下に近づき記念写真。上段は朝日を浴びて光って見える。誰かが滝の写真は曇っていた方がきれいに撮れると書いていたが確かに。陽が射していると、光と影でまだら模様になってしまう。少し戻って右岸から高巻くが、さすがに踏み跡は明瞭だ。倒木でわかりにくい上段落ち口に下る小ルンゼ入り口には古い赤テープがあった。

容易に大滝の落ち口へ抜けると、すぐ上が2段5m滝となる。右壁から下段を越えるが、上段はきびしい。両岸ものっぺりした岩壁で巻けそうにないので、少し手前の右斜面を空身で登り、中段あたりでツルツル岩を乗り越した。我々にとっては一番の難所だったかもしれない。

きれいな6m滝を越え、つづく4段20mは最初から巻くつもりだった。前回懸垂をして振られたことだけ覚えていたので、今回は全部まとめて巻いてしまおうと大高巻きルートを取って時間をくう。(反省その3)ヤレヤレとなってしまったが、ここからはふたたび気持ちよく越えられる小滝、ナメ滝が続き、木漏れ日を浴びながらの楽しい遡行となる。

しだいに滝の形状がスダレ状のナメとなり、ようやく正真正銘の「癒し系」に。途中に前回テントを張ったテンバ適地を通り、なつかしい。だけれど、ゆったり開放感という意味では、今回泊った場所の方に軍配が上がると思うのだが・・・

 

 

前方に両門のスダレ滝が見えて来た。なんだか時間がかかってしまったけれど、ようやく豆焼沢のもう一つの顔である60mスダレ滝へ。記憶以上にすばらしく美しいことにあらためて感激する。このスダレ滝を見たくて、歩きたくて再びやってきたのだもの。前回の遡行ではカメラを水没させて写真がダメになり、リーダーから送ってもらったわずかの写真もその後ハードウエアのクラッシュで消えてしまったため、写真が一枚も残っていなかった。

今度こそはとしばし撮影大会。歩きだすと終わってしまうのでもったいない気持ちになるが、今までの苦労もこのナメを歩くため。しばし至福の沢歩きとなる。60mナメ滝上もナメがしばらく続いたのち、しだいに苔むしたゴーロ沢となって高度を上げ、ゴルジュ滝が続く。どの滝も両岸がすべて苔で覆われ、白い水流とのコントラストが美しい。最近は何処へ行っても倒木が目立って悲しい思いをしているので、上流に至っても荒れた様子がなく安心する。

最後の二俣は、前回ガイド通り右へ進んだので左へ進むつもりだったが、水涸れの二俣ではたと迷う。左沢の形状がおぼろげな記憶とは違うなと思いながら、右がガレ沢となっていたので左のナメ滝を登ってしまう。少し登って傾斜が急になり、ようやくおかしいと確信して強引に軌道修正。今回三度目のヤレヤレで、なんだか情けなかった。(反省その4)

本来の左沢は、ふかふかの苔がさらに厚みをました小滝が連続して最後まで楽しませてくれる。そして前方に給水タンクが見えたと思う間もなく、突然頭上にハイカーが通り過ぎた。その人も予想もしないところから人があらわれたので驚いていた。どんどん先に登ってしまったYさんを呼び戻し、登山道が横切るところで遡行を終えた。

沢装備をといてハイカーとなり、快適な登山道をたどってまずは雁坂小屋へ。恒例らしいが、人好きのする小屋のおじさんが出迎えてくれてしばし談笑。あまりの暑さに小屋の中に逃げ込んで昼食をとる。最近手作りの料金箱の上蓋の釘が抜かれてお金を盗まれたとのこと。ここまで登ってくる登山者にそのようなことをする人がいるなんて情けなくなる。

暑さでバテ気味となり、雁坂峠はパスすることにして黒岩尾根を下山。よく整備された道だが、なにしろ長い。ずっと傾いた小径を歩き続けたため足裏がいたくなり最後は辛かった。林道に出る手前で、物々しく分岐道が閉鎖されていた。昨年の捜索ヘリ墜落事故の関係らしい。この道が釣橋小屋跡へ続く道らしいことがわかった。

さらに林道をあるいて豆焼橋から入渓点の豆焼沢を見下ろし、いろいろな想いが詰まった沢旅を終えた。そして、6年前の印象との違いに愕然としつつ、ブナの沢旅がまた一皮むけたような晴れがましい気持ちになったのだった。

 

 

 

15日 出合いの丘10:00-入渓点10:20-ホチの滝11:55/12/20-トオの滝上テンバ14:45

16日 テンバ5:45-大滝上8:30-スダレ状滝10:30-登山道12:25/12:55-雁坂小屋13:15/13:35-出合いの丘16:40